株式会社とみひろ/ 代表取締役 冨田浩志さん

株式会社とみひろは、創業から400年をゆうに超えるという超老舗企業。薬売りをルーツとし、呉服で商いを広げたという。しかし同社は「呉服商」という言葉からイメージされるような古い歴史と伝統だけの会社とはかけ離れた姿をしている。というのも、呉服販売だけでなく、着物のレンタル事業も行い、撮影スタジオを運営し、染織工房を持ち、和裁工房もあり、結婚式場をも運営し、養蚕事業も行い、近年では地域創生に関わる事業までをも行うなど、積極的に事業を広げているのだ。伝統を受け継ぐ企業でありつつも、新しい伝統を自ら創造する革新的な企業、と言えるのではないだろうか。今回は、同社代表取締役の冨田浩志さんに、会社について、求める人材について、お話を伺った。

株式会社とみひろ代表取締役の冨田浩志さん。山形市若宮にある「とみひろ振袖いちばん館」にて

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Q:とみひろの事業内容について教えて下さい。

冨田代表:私たちは創業から444年になる呉服屋です。店舗は山形を中心に仙台、大宮、川越、東京・青山、表参道、新宿、遠くは京都にもあります。2021年12月には神奈川・厚木に新店舗をオープンさせました。着物の販売から始まって、そこから事業の枝葉を伸ばしています。成人式の振袖、七五三、卒業式の袴のレンタル事業や、スタジオ撮影の事業も行なっています。結婚式場「一の糸」の運営のほか、デザイン事業も展開し、さまざまな施設や商品のサイン計画やロゴマークのデザインをしています。

30年前からは和裁工房も自社内に立ち上げました。国内で和裁士がどんどん減っているなか、その優れた伝統の技術を後世に残していきたいという想いから、和裁士の育成に力を入れてきたのです。さらには染織も自社で行います。染めは100%草木染め。織りも機械織りはせず、時間をかけた手織りにこだわり、一本一本糸を織り込んでいます。さらに2016年からは養蚕事業も始めました。

養蚕によって素材をつくり、生地をつくり、自社工房で草木染めし、手織りし、和裁で着物に仕上げる。生産から販売まで自社内で一貫した事業体制を整え、世界にたったひとつしかない着物をつくっているのです。こうしたことをトータルで行なえる呉服屋というのは、日本全国を見ても唯一、弊社だけでしょう。

近年では、養蚕事業の拠点、白鷹町でのご縁から旧奥山源内邸を受け継ぎ、リノベーションし、宿泊施設「NIPPONIA 白鷹 源内邸」としてオープンさせ、地域創生という事業にも力を入れはじめたところです。こうして、少しずつ仕事の領域を広げてきた会社です。

「日本文化の伝統美を創造し、その振興を通じて社会に貢献しよう」という社是のもと、私たちは単にモノを売るということではなく、着物を中心とした日本の素晴らしい文化の創造と育成を図っているのです。

Q:山形で働くことの可能性について、お聞かせください。

冨田代表:山形で学生時代を過ごしたけれど、いちどは都会に出てみたいという人。あるいは、いまは都会にいるけれど、いずれは山形に帰って暮らしたいという人。どちらも多くいるのではないかと想像します。しかし、実際のところ、山形にはその受け皿となる会社が少ないのが現状ではないでしょうか。

その点、弊社であれば、もちろん拠点は山形にありますが、関東にも関西にも支店がありますから、そちらの店舗で数年働いてから山形に戻ってくることも可能です。また、逆に山形の店舗で働いた後、県外店舗へ異動して都会で働いてみることもできます。私自身も都会に出てから山形に戻ってきた人間なので、一度県外に出てみたいという気持ちはよくわかります。その点でも弊社は、そういう希望をもつ若い人たちの受け皿になり得るでしょう。

採用の際に見るのは、人となりです。誠実であること、前向きであること、そして思いやりがあること。この3つが揃うというのは、なかなか難しいことでしょうが、そういう人がいいですね。スキルというのは、あとからついてくるものなので、それよりもまず大事なのは、人間性なのです。

世の中にモノが有り余っているいまの時代、何かを買うときにお客様が見るものはモノではなく、接客を担当してくれる店員であったり、会社のポリシーであったり…、バックボーンにあるものです。それがお店を選ぶ基準になっている。ですから、お客様から信頼されることがなによりも大切です。そこをおろそかにして、モノが売れさえすればいいと思っていては、どんなに歴史ある会社でもこの先長くは続かないでしょう。

私自身、これまでさまざまな地域に行く機会が多く、1年のうちの多くの時間を山形以外の土地で過ごします。そして帰ってくる度に「山形は捨てたもんじゃない」と思います。なんといっても台風や地震などの自然災害が少なく、安心できる場所であること。また、食べ物がおいしいこと。お米、果物、漬物、蕎麦、あらゆる食材が鮮度よく高品質で手に入ります。そして、出羽三山をはじめ長い歴史が積み重ねられていること…。そんなことを改めて思い直してみると、山形に生きていることにすごく誇らしい気持ちになるんですよ。

Company Data 社名 株式会社とみひろ
本社所在地  山形県山形市十日町4丁目1-3
代表者  代表取締役 冨田浩志
  創業  天正六年(1578年)
  事業内容 着物の販売とレンタル事業・宝飾品の販売事業・
写真スタジオ事業・ハウスウェディング事業・
地方創生事業・養蚕事業・染織事業・和裁事業・卸業
  社員数  120名
Webサイト https://tomihiro.co.jp/

株式会社とみひろ 社員インタビュー(小林久希さん)はこちら。

photo/ Mikako Ito, text/ Natsumi Nakayama, edit/ Minoru Nasu

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