日本地下水開発株式会社/代表取締役社長 桂木宣均さん


山形市を本拠地とする日本地下水開発株式会社。1962年に設立された同社の歴史は、山間地での農業を営む農家のために井戸を掘る、という事業からスタートしたそうです。その後、1970年代になると井戸から汲み上げた地下水を利用して寒冷地域の積雪問題を解消するための消雪システムを開発。やがてそれは地下水を路面に撒くことなく実現する「地下水還元式無散水消雪システム」へと発展しました。その仕組みはこの山形市内をはじめ各地の道路にインフラとして組み込まれ、冬の道に積もった雪を溶かしてくれることで、私たち市民の足元を快適にしてくれたり、道路状況を安全なものにしてくれています。
同社が持つボーリングという井戸を掘る技術、地下水を利用して雪を克服する技術、さらには地下水が持つ熱エネルギーを冷暖房の熱源として利用する技術は、日本各地の暮らしを支えているだけではなく、省エネルギーやCO2削減など地球温暖化対策にも多大な貢献をしています。2050年までの温室効果ガスの大幅な排出削減に向け、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)などと共同で研究開発を進めるなど、「持続可能性」が声高に叫ばれる時代にますます注目される企業となっていると言えるでしょう。

そんな同社代表取締役社長の桂木宣均さんに、これからの展望について、そして求める人材についてお話をお聞きしました。

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代表取締役社長 桂木宣均さん。山形市松原にある本社社屋にて。


御社の事業の現在について、教えてください。


桂木社長:2022年に創業60年を迎えました。井戸を掘ることに始まり、地下水を使って消雪する仕事などをしてきました。温泉を掘るのも私たちの仕事のひとつで、全国各地の温泉を掘ってきましたし、山形県内各地にも私たちが携わってきた温泉が数多くあります。そうした仕事を通して地域の皆さまに喜んでいただけるのは嬉しいかぎりです。

さて、近年私たちが取り組んでいる事業の一つに、地下水の熱エネルギーを利用するシステムづくりがあります。井戸から汲み上げた地下水の温度というのはおよそ15度。この15度という熱エネルギーを夏には冷房に、冬には暖房にうまく使うことで省エネルギーやCO2削減に役立てることができます。私たちは今このシステムを国の研究機関や環境省などと共同して研究開発を進めています。

本社前の看板に描かれている地下水利用概念図。地下水を循環させながら、その熱エネルギーを消雪に生かしたり、建物の冷暖房に利用したりすることで、省エネルギーやCO2削減に貢献する。そのシステムを設計・施工するのは同社の主要な仕事のひとつ。


ZEB(ゼブ)という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。Net Zero Energy Buildingの略で、一棟の建物において作るエネルギー量が必要なエネルギー量と同じかそれ以上で、エネルギー収支がゼロ以下になるように考えられた建物のこと。屋根には太陽光パネルを載せるのが一般的ですが、雪国の場合、冬は雪が積もるので思うように発電できなかったりするため実現が難しいと言われていましたが、私たちの地下水熱エネルギーを利用した熱供給システムを入れた建物でZEBが実現できることを実証し、国に認められました。
地下水の熱エネルギーを利用することは電気や石油の使用量を減らすことにも繋がり、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて非常に有効であると考えています。


専門的な技術の会社だと思いますが、そんな御社が求める人材とはどういう人でしょう。

桂木社長:グループ会社を含め社員数は200人弱。そのうちの60%が大学卒・大学院卒です。例えば、地質を専門的に学んできた人であれば、弊社の地質調査部門で活躍していただくということもあるでしょう。そのほかにも、土木や工学系、理学系、農学系など、専門的な知識を持つ人材を歓迎しています。

ですが一方で、仕事は基本的にはゼロからのスタートであり、入社後1年間は先輩指導員と一緒に働いていただき、OJTで仕事を覚えていただきます。そこで重要になってくるのは、それまでに学んだ知識というよりもむしろ、これからいろいろなことに積極的にチャレンジしようという意欲であり、自分の仕事を通して地域貢献していこうという気持ちだと思います。ぜひ、そういう想いを持った皆さんにおいでただきたいと思います。



これからのビジョンについてお聞かせください。

企業としての社会的責任、それも特に地方の企業にとっての社会的責任というものを考えるとき、最も重要なことは「雇用を守ること」です。つまり、持続可能な企業であること、ということになるでしょう。そのためには、事業を継続すること。それが一番重要なことだろうと思います。5年先10年先を見据え、そこに至るためにはどんなことをしなければならないのか、マイルストーンを立ててしっかりと進んでいくことが大切でしょう。

私たちが今取り組んでいる仕事というのは、地球の未来のために必要なことであり、これからの時代に重要な役割を担うものです。自分たちがその仕事をすることで地域がより良いものとなり、地域貢献にもなっていきます。そこに喜びを感じられる社員を育てていくということが私たちの使命だろうと思います。



Company Data 名称 日本地下水開発株式会社
代表者 代表取締役社長 桂木宣均
設立 昭和37年3月1日(1962年3月1日)
  所在地 〒990-2313 山形県山形市松原777番地
  事業 建設業(土木工事業、とび・土工工事業、管工事業、舗装工事業、機械器具設置工事業、さく井工事業、水道施設工事業)
地質調査業
建設コンサルタント
土壌汚染調査指定機関
  内容 ・克雪事業/無散水消融雪システム/散水消雪システムの設計・施工・維持管理
・資源開発事業/温泉開発の総合コンサルタント、温泉開発、水源開発
・環境エネルギー事業/地中熱・地下水熱、土壌・地下水汚染対策、地下水人工涵養
・地盤コンサルタント事業/地質・地盤調査、地下水調査・解析、物理探査、環境アセスメント
・防災関連事業/地滑り対策、防災井戸の設計、施工
  Webサイト https://www.jgd.jp/

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photo & video: Kaho Fuse, Suzuka Sato(strobelight)
text: Minoru Nasu(real local Yamagata

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